相続人に相続権があるのは親族への信頼関係から

相続の欠格と廃除

 

この記事は、相続の欠格と廃除、該当者がいる場合の相続順位の変更についてご紹介します。

 

相続人の廃除・欠格とは、簡単に言うと被相続人に対して害する行為、例えば非行や遺言書を書かせるなどをした場合に相続権を奪う制度です。

 

 

相談があるんじゃけど。
儂の財産を渡さないということは可能なんだろうか?


 

 

・・・何か穏やかな話ではありませんね。
ご親族との間に何かありましたか?
特定の相続人に遺産を渡さない方法ですか・・・
相続人の廃除という制度があります。


 

 

はい、ウチの長男なんですけども・・・
定職にもつかずフラフラしてて、儂の金を頻繁に無心するんです。
挙句の果てに借金をこさえて、それも全部儂が立て替えたことが有ります。


 

 

なるほど・・・
ご長男さんの非行が原因で相続権を渡したくないと言う訳ですね。
相続権をはく奪する方法としては、相続人の廃除という方法があります。


 

 

そんな方法があるんですね。
で・・・どのようにすれば廃除と言うヤツができるんですか?


 

 

生前に家庭裁判所に申し出るか、遺言書にご長男さんを廃除する旨の遺言書を残すことで可能です。
だけど廃除は簡単な手続きではありませんよ。


 

 

分かりました!
取り合えず長男に財産を渡さない方法が有るんですね。
早速、検討してみます。


相続人の欠格とは

相続人の欠格を説明する4コマ漫画
まずは相続人の欠格についてご紹介します。

 

相続人の欠格とは、被相続人や先順位者を殺害したり、自分に都合の良い遺言書を脅して書かせた場合に適用されるものです。

 

要件としては民法891条で以下の通りです。

 

(相続人の欠格事由)

第八百九十一条 次に掲げる者は、相続人となることができない。
一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
二 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
三 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
四 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

 

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

 

引用元:E-Gov法令検索の民法891条

 

欠格要件に該当する理由は簡単に書くとこんな感じです。

 

  1. 被相続人や先順位者を殺害した
  2. 殺害された事実を告発しなかった
  3. 遺言状を無理やり書かせた
  4. 遺言状を自分に都合の良い形に変更させた
  5. 遺言状を偽造したり破棄した

 

相続人の欠格は、上記の行為をしたら即座に適用される代物です。
家庭裁判所に申し出るとか一切ひつようありません。

 

 

最初の殺害はドラマくらいでしか聞いたことが無いですけど。
遺言書関係で欠格になる場合は意外とあります。


注意が必要なのは遺言状関係での欠格

親に遺言書を書いて貰う場合のリスク
遺言状作成のご相談で、たまにある事ですが・・・
親子揃って、事務所や無料相談会の会場に訪れて、遺言書を作りたいとの事です。

 

この段階で話すのは、ご子息の方ばかりで肝心の親御さんは一言も話さないパターンです。
(大抵の場合で、親御さんは無表情か憮然としている。)

 

このケースのリスクは、民法891条に抵触する可能性があります。
親御さんに無理やり特定の相続人に都合の良い遺言書を作成させたとして。

 

当事務所の場合ですが、民法891条の内容をご説明して、親御さんに話してもらようにしています。
(肌感覚として、親は遺言書を書きたくないと思っているケースが大半)

 

見分した事例では、公正証書で遺言書を作成している段階で・・・
親御さんは「これは私の意思ではない」と公証人に伝えて、遺言書の作成が白紙になったケースもあります。

 

親御さんに遺言書を書いて貰いたいニーズはありますが、1つ間違えるとこの様に無効になったり、欠格要件に該当することがある事をご理解して頂ければと思います。

相続人の廃除とは

相続人の廃除とは
お次は相続人の廃除についてご紹介します。

 

廃除とは被相続人に対する侮辱や虐待など著しい非行を受けたので、相続人の相続権をはく奪する制度です。
欠格と似ていますが、廃除と欠格は使うシチュエーションや方法が異なります。

 

  • 欠格は裁判所を通さなくても適用
  • 廃除は裁判所を通さないと適用されない
  • 廃除は被相続人が存命中は取消が可能
  • 廃除は遺留分を持たない兄弟姉妹は対象外

 

廃除は民法の892条と893条に規定された制度になります。

 

(推定相続人の廃除)

第八百九十二条 遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。

 

(遺言による推定相続人の廃除)
第八百九十三条 被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。

 

引用リンクは上部にあります。

 

引用元:E-Gov法令検索民法

 

簡単に書きますと

  • 民法892条

被相続人に虐待などを加えた相続人の廃除を家庭裁判所に申し出る事が可能

 

  • 民法893条

遺言で廃除する旨を書いた場合は、遺言の効力が生じた時に家裁に廃除を申し出る必要がある

 

かなり端折ってますが、概ねこういう事を言っています。

 

ちなみに遺言で相続人を廃除する場合、遺言執行者の選任が必要になります。

 

 

関連記事:相続人の廃除には遺言執行者が必要

 

 

相続人の廃除が必要な理由

遺留分の主張させない相続の廃除
相続人に財産を分け与えたくない場合遺言書を使うことを想定すると思います。、

 

  • 該当者の財産を与えない旨を書く
  • 他の相続人で全部の財産を分け与える内容

 

この様な感じに遺言書を使えば、相続人の財産は非行や虐待してきた親族に相続権を与えない事ができそうな気がします。

 

しかし、これでは相続権をはく奪することはできません。
兄弟姉妹や甥姪を除く相続人には、遺留分という権利が存在しています。

 

遺留分とは、遺言書などで相続分をゼロにされた場合でも最低限、確保できる相続権です。
遺留分は普通の相続権の二分の一となっています。

 

遺言や家庭裁判所で廃除の手続きが必要な理由は、親族が持っている遺留分を認めない場合に使います。
要するに一円も相続させたくなければ、廃除させないと無理という話です。

 

兄弟姉妹や甥姪に財産を分けたくない場合の注意点

相続人が兄弟や甥姪と配偶者(妻・夫)だけのパターンです。
この場合は配偶者に全部の財産を遺したい場合、必ず遺言書で行うことになります。

 

兄弟姉妹や甥姪には、遺留分が認められておりません。
相続の廃除が使えない訳です。

 

遺言書で配偶者に全部の財産を与える旨の遺言書を作って置かないと、愛する配偶者の老後の生活プランが破綻する可能性があります。

生前に廃除の手続きが厳しい理由

相続人の資格を奪う廃除の制度なのですが・・・
生前、遺言書でもそれほど多くの方には使われていないです。

 

理由は家庭裁判所の手続きにあります。
要件が厳しいこと(相手が嫌いや気に入らないレベルではNG)。
手続きの中に廃除を求められた相手への陳述を聴くという物があります。

 

要するに相続をしたくない相手に、家庭裁判所が意見を聴きに行くというものです。
実質的に親族に宣戦布告するような物です。

 

大きなトラブルに発展する可能性があります。

欠格や廃除者が居る場合の相続

廃除や欠格者がいる場合の相続
ここからは、相続廃除や欠格の該当者が居る場合の相続についてご紹介します。
放棄と違って、欠格や廃除には代襲相続(相続権が子供に引き継がれる)が認められています。

 

廃除や欠格者がいる場合の相続関係

 

パターンは2種類あります。

  • 代襲相続で子供に引き継がれる
  • 子供が居ないので次の順位者に相続権が移る

 

例えば上記の図の様に、元々の相続人は長男と妻(配偶者)でした。
しかし長男は欠格もしくは廃除で、相続権がはく奪されてしまいました。

 

長男には子供が一人います。
はく奪された相続権は、代襲相続で孫に移ることになります。

 

  • 子供が居ないので次の順位者に相続権が移る

次は長男に子供が居ない場合です。
上記の図を参考にすると、長男の相続権が無くなり孫も居ません。

 

なので、亡くなったお父さんの父親か母親(長男にとって祖父母)が相続権を獲得します。
ここで祖父母も亡くなっていた場合、長男の兄弟に相続権が移る事になります。

 

この様な感じで廃除や欠格があると、相続権は異動していきます。

 

 

相続欠格・廃除とは?該当者がいる場合の相続手続きはどうなる?でした。
ここまでお読みいただきありがとうございます。


 

 

 

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